“特派員”は必要なのか? ネット時代で役割が変わる(Business Media 誠)

 「いつかは海外支局の特派員に」――。新聞社やテレビ局に勤務する報道記者の何割かが必ず目標にする職務が“特派員”だ。外国語を駆使して海外の要人にインタビューし、紛争地を飛び回る特派員の姿は、たびたびドラマや映画の素材になる。が、華々しいイメージとは裏腹に、特派員はその仕事の中身がここ十年ですっかり様変わりしているのだ。

 仕事を変えてしまった背景には、インターネットの存在がある。今回の時事日想は、一般にはあまり仕事内容が伝わってこない特派員に触れる。

●NYタイムズ・Web版の衝撃

 十数年前、筆者が通信社の編集局で速報オペレーターを務めていたころ、新卒記者が編集局内で大騒ぎしている場面に遭遇した。新人の手には当時発売されたばかりのIBMの小型ノートPCがあった。新人君が興奮していたのは、PCのスペックの高さではなく、その中身だった。

 「先輩、こんなサービスが普及したらウチの特派員は全員いらなくなりますよ」

 彼のPCには、当時サービスが開始されたばかりのニューヨーク・タイムズ紙のWeb版が表示されていたのだ。古巣の編集局にはインターネットにアクセスするIDが1つしかなかった“石器時代”であり、筆者も新人君の意見に同意したことを今でも鮮明に記憶している。

 当時も今も、通信社にとって重要な業務の1つが海外紙・テレビのモニターだ。海外メディアの主要ヘッドラインをピックアップし、何が起こっているかを日本に伝えるのだ。もちろん当時の古巣では、ニューヨーク・タイムズ紙の主要見出し、トップ記事を翻訳して日本語ニュースに起こすのはニューヨーク特派員の重要な仕事の1つだった。ネット経由で同紙が記事を配信することで、特派員がこなしていた業務は東京の編集局でも充分にこなせる仕事になったのだ。同時に、通信社のサービスを利用しているユーザーにとっては、割高な料金を支払わずともタダで同紙を読む事が可能になったわけだ。

●不要になった市況データ

 海外紙のネット配信だけでなく、通信社の特派員の仕事を変えてしまったのが市況原稿だ。ニューヨークやロンドンなど外為や金利、株式や商品など主要市場を取材対象としてきた海外支局では、特派員が取引所の各種データを入手し「ニューヨーク株が続落」「ロンドンで円急騰」といった記事を書き、本社に送っていた。これが日本国内の金融市場関係者に配信されていたわけだ。が、各国の主要取引所のネットを介した数値情報の開示が進むにつれ、「金融の素人が書いた市況記事ではなく、生のデータがあっという間に入手可能になった」(都銀の外為ディーラー)という構図だ。

 数年前、後輩記者が主要市場を抱える海外支局に特派員として赴任することが決まった。もちろん、経済部のエース的な存在であり、国内での実績十分な人物だった。が、彼が赴任する直前、筆者にこんな言葉を残したことが鮮明によみがえる。「支局長や本社の幹部からたくさんの市況記事を書けと言われているが、果たして需要はあるのか」。残酷だが、筆者は先の外為ディーラーと同じ言葉を後輩に伝えた。この記者が優秀だったのは、筆者の言葉を聞いた直後に「ネットでは拾えない地元の話や、人と会って聞いた話を中心に記事を送る」と言い切ったところにあった。現在もこの後輩記者が送った海外の話題は、さまざまなメディアに配信されており、筆者も熱心に記事を読んでいる。

●ネット時代だからこそ“生のネタ”

 主要紙、テレビで海外特派員がさまざまな情報を日本に伝えているが、「そのうち何割かは海外通信社や現地新聞の情報をお手軽にコピペし、日本語ニュースに置き換えたもの」(某紙NY特派員)なのだ。

 先に触れたように、ネットを介して情報が瞬時に世界中を駆け回るご時勢で、特派員の仕事は大きく変質したにも関わらず、である。

 海外のさまざまな金融取引のデータ提供がウリだった通信社の収益が落ち込んだ背景には、ネットの普及により誰もが簡単に、そしてタダでデータにアクセスできるようになったからに他ならない。これを主要紙の国際面に置き換えれば、いまだに現地紙のコピペでお茶を濁しているようでは、読者に飽きられ、かつ不要とされてしまうのは明白だ。「支局内のルーティーン業務が多すぎて、なかなか外に取材に出られない」(同)向きが多いのは事実だし、かつての同僚や他社の友人から実際に話を聞いている。が、ネットという巨大なタダのメディアができあがってしまった以上、ここに流れていない生の声、そしてネタを提供することこそが特派員の役目なのだ。

 筆者は現在、複数の主要紙の特派員電を楽しみにしている。特派員諸氏が言葉の壁を乗り越え(あるいは優秀な現地スタッフを動員し)、各地の地ネタやイベントを丹念に回っているからだ。特派員が1人ひとり感じたこと、憤ったこと。これを文字にすると記事は俄然面白くなる。経費削減の昨今、人件費が膨大な額に上る特派員を削減し、海外通信社の配信や現地紙との提携に踏み切る国内メディアが増加するのは間違いない。海外特派員のさらなる健闘・奮闘を1人の読者として期待している。【相場英雄】

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 JR西日本は17日、安全性を向上させた新快速用の新型車両「225系」を報道陣に公開した。新快速の車両を新しくするのは約14年ぶりで、今年度中にも京阪神エリアに投入する。
 225系は600人を超える死傷者を出したJR福知山線脱線事故の教訓を生かし開発された。衝突時の安全性を高めるため、先頭車両の前面下部を強化し、相対的に強度の弱い上方に衝撃を逃がす構造を国内で初めて採用。現在の223系に比べ、衝撃加速度を半減できるという。
 また、つかみやすいように大型化したつり革は、1両当たり約80個から約130個に増やし、色は目立つようにオレンジ色に統一した。 

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アイヌ 「知里幸恵記念館」着工 伝統儀式で安全祈願(毎日新聞)

 「アイヌ神謡集」を残したアイヌの知里幸恵(1903〜22年)の生涯と業績を伝える「知里幸恵 銀のしずく記念館」の着工式が8日、幸恵生地の北海道登別市登別本町2で行われた。NPO法人・知里森舎が建てる。02年から建設募金委員会(作家・池澤夏樹代表)に寄せられた約2400人の浄財約3000万円が充てられ、幸恵の命日(9月18日)前日までの完成を目指す。

 この日はチセ(家)建設時の伝統儀式「チセコッエノミ」が行われ、アイヌの北原次郎太・北大准教授(34)を祭主に、工事の安全を祈願した。記念館は木造一部2階建て178平方メートル。アイヌ神謡集の初版本、草稿ノートの復刻版など約300点を展示する。

 募金委員会メンバーで童話作家の加藤多一さん(75)は「(社会に)差別や圧迫される存在があることを認識し直される象徴的な場になればいいと思う」と語った。知里森舎理事長で幸恵のめい、横山むつみさん(62)は「多くの人に支えられ、ここまできた。感無量」と話した。【新庄順一】

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